平成20年度の いぶきの理念

2008.3.19 センター長 畑野 秀樹

ケアセンターいぶきも、2年目を終わり、3年目を迎えることになりました。ただ無我夢中で進んできましたが、軌道に乗りつつあり、いろいろな問題に直面しつつも、スタッフが自ら考え解決していくような組織となっていると思います。周辺の地域からも「いぶき」の取り組みを興味深く見ていらっしゃるようですし、地域の人からの信頼が日増しに増えていることを実感します。

 米原市の人口は4万2千人、高齢者人口は約1万人。米原市内の集落のうち、5人に2人が55歳以上という集落が半分以上になるそうです。高齢化という問題、多死という問題、小子という問題にこれから直面します。この地域をどのように支えていくことができるか住民の力を集結しつつ、「いぶき」ができることを貢献していかなければ、と思います。
これから2025年までの間の、高齢化する日本社会のキーワード

◆認知症ケアと緩和ケア
    ・・・2025年高齢者はピークに達し、認知症は今の2倍に増加、がん患者も増える
◆地域連携と多職種協働    ・・・住民を、医師や看護師や介護士やセラピストやケアマネや民生委員や健康推進員や保健師や、いろんな職種が連携して支えていく。
◆在宅医療          ・・・医療費抑制・高齢化のため、病院が患者さんを抱えきれない。在宅の方向へ

これからのいぶきの進むべき方向

◆「地域支援とリハビリ」を理念にする
◆この地域の住民が、安心して生活できることを支援する
◆看取り=「満足死」も、老健で受け入れる





◆理念の修正
地域包括ケアセンターいぶきの基本理念を、「在宅支援とリハビリ」から
「地域支援とリハビリ」に修正します。

いぶきは、診療所と訪問看護ステーション、居宅介護、デイケア、老健、ショートステイの複合施設であり(医療保険と介護保険、地域性や目的が異なる部門)、60名のスタッフを抱えており、全部門を通しての基本理念がやや立てにくいところがあります。特に老健では、湖北近隣一帯から入所されるため、利用者さんのご家族や家が見えない状況です。家に帰すためにリハビリをしてADLを向上させることを目的としてきましたし、入所者さんが気持ちよく過ごせるように、ホテル並みの接遇をめざしてきました。

 しかし、このようなアメニティの高い施設をめざすと、1〜2割のリハビリができない人、状態が悪い人は、老健の「よい」対象者から外れてしまいます。ご家族から「なんでよい方向に向かわないのだ? これでは家に帰れない」と言われて、施設巡りとなってしまうこともありました。また「家に帰す」目的で入所したはずなのに、家族が元からそのつもりはなかったというケースもありました。

 今後は、いぶき周辺に住む住民、スタッフが住むこの地域の住民が、安心して過ごせる施設であるのがよいのではないか。よそに行かなくても地元で最期まで過ごせることを支援する施設。病院では窮屈な生活を強いられて入院が嫌であれば、老健で悠々と過ごせる、場合によっては死に至る時間を迎えることができる施設。スタッフの日々の生活が、休日に地域住民とふれあえる施設。たとえば村の祭りや、運動会などで出会うと、「いかがされています?」「お世話になりましたな」などと言い合える施設がいいのではないかと考えます。

 なぜ米原市に限りたいかというと、たとえば行政自体が、合併により地域の顔が見えなくなってしまって消耗してしまっていること。行政組織でないケアセンターいぶきだからこそ、地域を小さくして、地域に特化できるのではないかと思います。患者(利用者)さんの、家や家族や親戚までが見える中で、田舎都市ならではの密度の高いコミュニティを作ることができるのではないでしょうか。

 老健の入所判定も、地域の人に特化してもいいのでないか。ホテル並みの住みやすさは不要であり、家に近い状態で、家に帰っても過ごせるだけの生活力を持たせた方が、利用者のためになります。入所者にとっては、不便であっても自由に過ごせるほうがいいのではないでしょうか。あとはリハビリをしたい人については、地域外からも入所を受け入れるようにしてはどうでしょうか(脳卒中、大腿骨頸部骨折 病診連携パス)。


 
老健を地域に特化させることで、診療所の外来や在宅医療のエリア、訪問看護や訪問リハビリ、デイケアとのエリアと重なってきます。施設と家とをつなぎ、地域循環型施設として活きてくるのではないでしょうか。地域限定することで入所者が減少するリスクはあったとしても、それをしのぐ地域住民へのメリットがあります。他地域の人への排除ではないかという意見もあるかもしれませんが、うちの方法が評価されれば、他地域でも同じ方向に向いてくるでしょう。

 
私たちが目指すところは、将来にわたる「元気な地域(米原市)」支援です。