シンポジウム「在宅ケアで幸せ家族」

2010.2.14 @大津市ピアザ淡海

シンポジウムで発表をするために、大津に行ってきました。湖北の地域は雪のため運動不足。三井寺にお参りしながら、散歩してきました。大津の湖岸からは、白い伊吹山が見えました。

滋賀医大 ニュース


三井寺

京都ほど観光地化されていない

大津市(琵琶湖西岸)の風景

湖岸からは伊吹山が見えました

三ッ浪先生

川越先生

会場の様子

大塩先生

県庁 草野さん

シンポジウム 「在宅ケアで幸せ家族」

日時:平成22年2月14日(日)午後1時〜午後4時30分

場所:ピアザ淡海 大会議室

趣旨:在宅で最期を迎えたいという希望は6割を超えますが、その割には在宅ケアが広がっていません。在宅ケアの素晴らしいところはどんなところでしょうか。一般の多くの方々に在宅ケアについて関心をもっていただくために、医療・福祉・行政の立場からみた在宅ケアの利点を各シンポジストに示していただき、充実した在宅ケアを広める上での問題点についてもみんなで討論します。

対象:一般、医療福祉関係者

シンポジスト:

【医療の立場から】
地方における状況:地域包括ケアセンターいぶきセンター長 畑野秀樹
都会における状況:あおぞら診療所所長 川越正平氏

【福祉の立場から】
龍谷大学社会学部地域福祉学科教授 大塩まゆみ氏

【行政の立場から】
滋賀県健康福祉部医務薬務課在宅医療・看護担当 草野とし子氏

司会進行:滋賀医科大学医学部家庭医療学講座 三ッ浪健一氏

主催:滋賀医科大学 医療福祉教育研究センター
後援:龍谷大学 滋賀県

畑野サマリー
◆三ッ浪先生 挨拶
 どこで最期を迎えたいかアンケート・・・自宅62%、病院 15%、ホスピス 12%, 介護施設 5%・・・
 実際の在宅死 15%、医療機関 82%

◆畑野
在宅を支えるためのツール・・・診療所、訪問診療、訪問看護、老健(ショート)、デイケア
地域連携・多職種協働
昨年37人の在宅看取り、地域の4割

◆川越先生
人口48万人の松戸市におけるグループ在宅診療
都市においては、たくさんの連携先、家族の介護力の低下、土地代が高い、医療・介護スタッフの離職率が高い
生活と医療を多職種が支える
訪問看護との連携
多職種連携は同職種連携から
集中ケア担当者会議・・・ケアマネとのミーティングタイム
家族志向性のアプローチ(ケアのシンプル化)
緊急時の施設利用(ショートステイなど)

◆大塩氏
在宅ケア・在宅死は幸せか???
介護負担は憎しみを生む。福祉サービスの選択の自由を
在宅ケアは都市部では苦しい
増える一人暮らしや高齢者世帯
自殺・無理心中、殺人、虐待、孤独死
福祉サービスを質・量ともに増やす施策を

◆草野氏
滋賀県基本構想・・・切れ目ない医療、医療が介護と共同して提供されること
医療・福祉・介護の有機的な連携
住民が見える形にする(住民参加型)
住み慣れたわが家で生活したい、最期を迎えたいという選択肢を可能にする
課題・・・退院調整、在宅医療スタッフが不十分、ネットワークがまだ、ターミナルケアがまだ
地域連携クリティカルパス 急性期病院→回復期→維持期(二次医療圏内で完結)
顔が見える関係の構築(東近江市の三方よし研究会)
在宅支援診療所の整備・・・滋賀県でまだ69ヶ所
訪問看護ステーション・・・滋賀県で61ヶ所(増えない)、24時間は51ヶ所
在宅ターミナルケア普及事業

◆質問・意見
在宅を支援する医師は大変ではないか? クリアする工夫は?
ショートステイなどをうまく利用する。特老・老健がもっとショートを増やして欲しい
都市部における連携の苦労は? 在宅チームの構成
地域全体を支えるという理念の共有
滋賀県は在宅福祉や地域福祉には長い歴史がある。使命感をもつこと
訪問看護ステーションが増えない理由は?
在宅医療をする医師が見つからない、増やしてくれ。

シンポジウム

 投稿者: 投稿日:2010年 2月14日(日)22時21分34秒 121-80-39-28.eonet.ne.jp
返信・引用
    在宅ケアで幸せ家族のシンポジウムのお話、とても驚きの時間でした。というのも幸せを感じたいという思いでお話を聴きにいったものですから。繋がり合うと は、在宅していくためにいろいろな情報を集めることという感覚で2年間在宅してきました。というのも介護がスタートした時、仕事とのバランスを考えサービ スを組んできたのが現実。よって母に変化が。これではと、正職からパートに代わり、今があります。それでも、精神的に負担を感じています。でも、先生のお 話の中で仕事に出ましょうの言葉。心が楽になりました(仕事が好きなんです)。心と体のバランスを保ち生活することの難しさも感じていますが、その人らし さを感じながらできる限り在宅で…、いぶきのように見取りまで考えるには、安心し相談できるDr探しからになりますので現実的に?かとも思いますがあきら めず、一日一日向き合っていきたいと思いました。

都会には何が必要なのでしょう?

 投稿者:  投稿日:2010年 2月17日(水)22時16分54秒 119-228-101-222.eonet.ne.jp
返信・引用
  またまた、書き込みさせていただいています。シンポジウムでは質問できず、皆様のやり取りを心揺 さぶられながら聞いていました。お返事の最後に「都会では・・・」。先日の二人のDrのお話をお聴きしながら、患者、家族は繋がりがほしいのではと感じて いました。不安だから病院に足を運んでしまうのでしょう。病院では診断・治癒をしてくださいますが私の場合、介護が絡んでくると見通しや支援する上でのヒ ントなど安心できる言葉がほしくなりました。相談できるDrです。見えない不安にかすかな道しるべを求めているように思います。都会でも同じかな?
先生の今までの書き込みを読ませていただくと本当に地域の中でのご苦労を感じます。心がいっぱいになり過ぎないように地域の方とともに…。
 たくさんの写真、とてもきれいですね。伊吹山が職場から見えるのですが、今日の雪景色とってもきれいでした。
 介護疲れ…私自身経験しました。あるDrからいわれた言葉「みんながしていることではないんですよ」その言葉でハッとし自分がという思いが少し抜けたの を。耳鳴りや不眠は単なる仕事の疲れかと思ってました。正職からパートに変わったことで時間に余裕ができたのですが、仕事に対する充実感を感じられず戸 惑ったのも事実。ちょうどいろいろ人生設計を考え直さなければならない時期に入ったんだとやっと考えられるようになった今です。介護される側の心を少しで も感じていきたいと思います。

京都の開業医さん Kさんよりメールをいただきました  感謝です

「在宅ケアで幸せ家族」、なかなかよかったですよ。

まず、在宅ケアには限界があり、「施設」も立派なものを作れば値打ちがある、とした大塩氏。
おもしろかったですね。シンポジウムというからには別の意見をもつ人を入れないとおもしろくありません。

それから、行政が地域医療に取り組んでいるという東近江市。羨ましいですね。

川越先生、評判通り頑張っていらっしゃるようです。

それで変える道すがら考えたのは、まず、住民さんからの目先の需要を見るべきと思いました。
最期まで自宅に住めるようにとがんばるHATABO・川越先生、義父母を見るべきと締め付けずに施設を充実すべきという大塩氏、そういう選択肢があることを知らずメディアや井戸端会議の話に困惑する住民さん・・・。

まず、どのような老後があるのか住民さんに周知して行く必要があるのでしょうね。突然発言した男性、同じ思いの方はかなり多くいらっしゃると思います。そのような方にも分かりやすく教えていってゆっくり老後を考えていってもらえればいいですね。その上で施設が足りなければ作っていく必要があるし、在宅志向となれば訪問診療に携わる医療者を増やさなければならない・・・。

自分は訪問診療に携わる医師を増やして行きたいと思っていてどうすればいいのかと日々考えているのですが・・・。川越先生の話を聴いてふと思いました。かかりつけ医がそれぞれの患者さんを最期まで診るという気持ちでいれば、在宅医療に特化した川越先生のような方はニッチな領域となるはず。逆に言えば訪問診療を避ける医師がそれだけいらっしゃるのだと痛感しました。そして、「開業医たるもの4-5人くらい訪問診療するのがあたりまえ」というのを常識にするのはやっぱり無理なのかとも思いました。

在宅医療専門医、在宅医療にも熱を入れる一般開業医(自分もそのつもり)、在宅医療を仕方なくする一般開業医(自分が見ていた患者さんくらいは見るーこれが多数派かな?)、在宅医療を全くしない一般開業医(高齢医師、在宅が性に合わないなど)、いろいろあっても仕方ないのかな。

だったらその多数派の先生方に新規在宅症例を1例ずつでも診ていただけるように頑張ろうかなと思いました。そのためには多数派の開業医さんの在宅に対する敷居を低くしないといけません

いろいろアイデアはあるので医師会担当理事さんにも相談してみます。例えばいきなり難症例を受け持ってもらうのはきついのでケアハウスやグループホームの新規症例を開業医さんに受け持ってもらうとか、医師会の会合(講演会など)のたびにワンポイントレクチャーのような形で在宅医療の必要性を訴えていくとか、在宅専門医療機関に医師会への協力を呼びかけるとか・・・。
またちょっとファイトが沸いてきました。
地域のためですものね!

H市のO先生よりメールをいただきました。 ありがとうございました
HATABO一番でした。
K先生の言う男性は先生に心酔していました。ただ発言で一般医師を非難するような意見を述べましたので反論しました。
しかし小生も述べましたが市民を巻き込むことは大切な事と思います。
本日在宅ホスピス世話人会では甲賀の瀬戸山先生が同様な事を発言されておりました。
三方よしは計7回市民講座を開きました。だから本日のような医師不信の意見は最初の2回くらいまではありましたが今は一切ありません。本日の最後にありましたように男性と今は大の理解者、仲良しになっております。

在宅医療という富士山のような高い山。
しかし富士山には色々な登山道がある。
色々な道から頂上を目指せばよいのだ。

H市のH先生よりメールをいただきました。  ありがとうございました。
畑野先生、お疲れさまでした。私も聴きに行きたかったのですが今日は、休日診療所に勤務しておりました。
都市部では在宅医療はできても在宅看取りまで支えられるのはごく一部でしかないのでは?といつも思います。
以前、県庁の方とお話したときに、在宅医療(在宅看取り)で必要なものは?と聞かれたときに「地域」と答えました。
それは、家族はもちろんですが、ご近所であったり、それを受け入れることができる文化がある「地域」です。
最近、Y市方面へも訪問診療をしていますが、Y市もそのようにきっとできる「地域」だと思います。

ですので、いぶきはもちろんだと思いますが、E地域でも「地域」の人々の在宅に対する理解や受け入れは比較的スムーズです。

都市部ではどうしても個人の権利や他人への不干渉がルールとなっているので、違う価値観を受け入れるのは難しいのではないかと思います。とくにマンションや新興住宅地などでは、ほとんど受け入れてもらえないのでは?(想像です)
ですので、都市部では都市部の別のシステムが必要なんでしょうね。
「地域」だけではなく、たくさんの「専門スタッフ」が支えるようなシステム、つまりあおぞら診療所のようなシステムだと思います。

滋賀県でも大津などの都市部では近々の問題なんですよね。
いいシステムができることを期待しています。

滋賀医大のM先生よりメールをいただきました。 ありがとうございました。
畑野先生、出席いただいた先生方

ありがとうございました。きれいな伊吹山と重なる明るい在宅療養の様子を見ることができました。楽しみながら地域ケアを行っておられるのが本当に素晴らしいです。
在宅ケアに対する市民の反応(戸惑いを含め)を聞けたのは貴重でした。そして熱心に在宅ケアを推進する医師が素直に評価されたのは、当然とは言え、大変力づけられました。
施設介護充実とのかねあいを含め、在宅ケア推進にはまだまだいろいろな論議が必要なようですが、みんながよりよく生きることができるための確固たる選択肢となるよう頑張りたいものです。

畑野スライド アウトライン
在宅ケアで幸せ家族   
滋賀県米原市
地域包括ケアセンターいぶき
畑野 秀樹

これからの超高齢化社会のキーワード
@認知症
Aがん(緩和ケア)
B少子化、高齢化、多死化
C地域連携・多職種協働

70代男性 肺癌、胸髄転移、 下肢麻痺
80歳女性 関節リウマチ、両大腿骨骨折、 両膝関節人工関節置換術
家族の世話にならないように、自分でポータブルトイレに行きたい
家族が仲良く暮らしたい    →人間らしく生きる

滋賀県の高齢化の状況

高齢化率

一人あたり老人医療費

地域包括ケアとは
保健・医療・福祉をひっくるめたまちづくり
病気の予防〜病気の治療(Cure)〜介護(Care)
乳幼児〜小児・学童〜成人〜壮年〜高齢者まで
個々の高齢者の状況やその変化に応じて、介護サービスを中核とした様々な支援が継続的かつ包括的に提供される仕組み
目標は、「住民の健康と安心」

地域包括ケアセンターいぶき
診療所(6カ所)
訪問看護ステーション
居宅介護支援事業所
デイケア(通所リハビリ) 定員20人
老健(60床、うちショートステイ30床)

地域包括ケアセンターいぶき 職種
医師 3名
看護師 24名
介護士 26名
理学療法士(PT) 3名
作業療法士(OT) 3名
薬剤師 1名
管理栄養士 1名
事務他 11名    
          計72名

診療所

老健(介護老人保健施設)   
理念は、「地域支援とリハビリ」     60床
歩けるように、食べることができるようにして家に帰す
入所期間は3ヶ月を限度とする  ・・・在宅復帰8割
ショートステイを増やす・・・30床   平均5日      →1ヶ月に120人でルームシェア
看取りOK・・・入所中  亡くなる直前に家に帰すことも

訪問看護ステーション
米原市から委託を受けて開設
看護師3名
「いぶき」の他に、「アンタレス」 や「日赤」との連携も・・・

デイケア(通所リハビリ)
定員20名
米原市の住民を対象(送迎エリア)
リハビリに特化・・・隣接する社協 デイサービスセンター(愛らんど)との関係を考慮し、入浴なし

リハビリ部門

在宅医療
(例)大腿骨頸部骨折や脳血管疾患
急性期は病院で
  ↓ その後、リハビリ施設へ(老健など)  ↓
  家へ

「地域が病院、家がベッド、電話がナースコール」
24時間体制・・・携帯の電話番号を知らせる
他機関との連携により、重度でも独居でも帰れる

地域連携パス
米原では・・・
家をベースにした地域循環型医療・ケア・リハビリテーションを

訪問診療など

訪問診療エリア
今では最期まで 自宅で迎えようと いう意識の家の 増加
医師複数体制
多職種連携

在宅医療を応援するわけ
家の中に (生)、老、病、死がある
生きることの大切さが、若い世代に伝わる
現代は、在宅死は15%  →旧伊吹町 40%
病院での生活は、患者さんにとって幸せか?
家で過ごしたい人は、家に帰したい
30年後、60年後の日本のために

在宅医療は一人ではできない
重度でも(完全寝たきり、胃瘻栄養、重度認知症)、 一人暮らしでも、家で過ごせる
医師・看護師・ホームヘルプ・デイサービス・デイケア・・・
理学療法士・作業療法士・・・

在宅医療(地域包括ケア) は地域づくり
親子の思いやり、家族のつながり
老・病・死を家族に見せることは、次世代に「生」を教えること =「高齢者は教育者」という地域づくり
30年後、60年後に、なおも家族の絆を大切にし、思いやりを持てる地域づくりをしていくためにも、在宅医療は大切にしたい

時代の先端を行く米原市と市民の生き方
子育てしやすいまち。子どもに「帰ってこい」と言えるまち
高齢者に生きがいを持って生きてもらおう
家や地域における役割を持ってもらおう
老いても家で暮らそう
家で死のう

時代の先端を行く米原市と 医療介護の支援
リハビリをして家に帰す・畑に帰す医療や介護を
介護のお世話になっても、畑ができるように
入院はできるだけさせない
お嫁さんを働きに出そう・・・仕事に行ける介護を
命の大切さを、こどもたちに伝えよう

まとめ
在宅医療は、思いやりのある地域づくり(まちづくり)のチャンスである
「生きること」を高齢者が若い世代に伝えていく大切な 教育の場である
地域の資源をどんどん使い、多職種協働
後方病院の存在が、医師にとっても、患者・家族にとっても安心となる。
診療所医師ができることは、24時間の支援である(つながっている安心)。
みんなで一緒にやっていきましょう!!