平成26年度 老健取り組み発表会

2014.11.12 17:45〜  ケアセンターいぶき

老健スタッフが、自発的に日頃の仕事の中で疑問を持ったことについて発表してくれました。どの演題も、利用者のことを考えた秀逸なテーマでした。開設して9年目、スタッフも大きく成長してくれたことをとてもうれしく思いました。すっかり発表慣れした様子であり、今後は対外的にも積極的に発表して、客観的な評価をもらってほしいなとも思います。何はともあれ、皆さんお疲れ様でした。
@「どうする? りんゆうターミナルケア 〜事例を振り返り気づいた今後の課題〜」
A「環境整備による仕事の効率化」
B「利用者をひもといて、自分もひもとこう 〜ひもときシートを記入してみて〜」
C「インシデント・アクシデント対策表を使用して」
D「みんなで介護をされてみよう 〜明日からのケアのために〜」
E「チーム口腔ケア」
F「園芸を通じて期待できる効果」


   
   
   
   
   
   
   
   
   

@「どうする? りんゆうターミナルケア 〜事例を振り返り気づいた今後の課題〜」
国の施策として在宅、施設での看取りを進めている。老健を看取り目的に利用される人も増えてきた。住み慣れた「我が家」ではない老健で、どのように関われば、その人らしい最期を迎えられるのか考える必要がある。事例を基に検討してみた。スタッフは自分のケアに疑問を感じていた。疑問や不安を吐露し合えるスタッフ間の関係性、経験豊富なスタッフによるフォローが必要である。家族への援助も必要だが、そのために家族との会話を深め、信頼関係を築くことが重要と考える。最近では他職種(特にリハビリ職)との連携をとり、最期まで「その人らしく」過ごしてもらえたと思われる。一つ一つの事例ごとにしっかりデスカンファレンスをし、次につなげるようになりたい。

A「環境整備による仕事の効率化」
業務が多忙化する中、スタッフのやる気だけでは補えないものがある。そこで業務の効率化を図るうえで環境に関する問題点を明確にする。また問題点に対する解決策を提案した。キッチン周囲の整理、畳コーナーの整理、スタッフの環境に対する意識についてアンケートを取った。かごやボックス、退所時チェックカードの作成により、よくなったと答えるスタッフが多くアクシデント・インシデントも減少した。

B「利用者をひもといて、自分もひもとこう 〜ひもときシートを記入してみて〜」
利用者一人一人の個別ケアを行うため、スタッフ間で情報を共有することが必要である。多方面からアセスメントできる「ひもときシート」を利用して、スタッフに記入してもらった。看護師は、医療面や家族との対応面での記述が多くみられた。介護士は、利用者の感情面、環境面に関する記述が多くみられた。ひもときシートを利用してアセスメントしてみたが、難しいと感じるスタッフもいた。また、利用者の見方や関わり方は変化が見られず、思考の展開には反映されなかった。スタッフそれぞれがいろんな情報を持っているが偏りがあり、情報を集めることでアセスメントの質も向上すると考えられる。利用者に寄り添った統一したケアにつなげていきたい。

C「インシデント・アクシデント対策表を使用して」
日常業務の中でインシデント・アクシデント用紙を用い記入しているが、利用者一人に同じような報告が繰り返されていることもある。そこで報告書の内容と対策を「対策表」に転記し、見やすいようにカーデックスに挟んだ。しかしインシデント・アクシデントの減少にはつながらなかった。理由として、報告書と対策表への記載という二重の作業が面倒な印象をもたれたのではないか。対策を一覧にすることで過去の報告書の内容を確認でき、カンファランスで決まった対策が目に見える形で残り、ユニット内で共有できる利点がある。今後は対策表の改善を行い、インシデント・アクシデントの減少につなげたい。

D「みんなで介護をされてみよう 〜明日からのケアのために〜」
介護される側のロールプレイをしてみると「ずれた姿勢からのギャッジアップがこんなにつらいなんて」と感じた。今回伝達講習を行う中で、利用者体験会を行うことにした。スタッフに新たな発見をし、自らのケアを見直す機会になればと思う。【食事】、声掛けしてほしい、スプーンではなくおしぼりで食べ残しを拭いてほしい、とろみ茶はまずい。【ポジショニング】、スタンダードタイプベッドと体圧分散マットは使い心地がよかった、背抜きは楽だった。このような介護される経験で感じたことを、今後の介護に役立ててほしい。

E「チーム口腔ケア」
全てのスタッフがより口腔ケアについての重要性を学び知識を深めることで、利用者の健康増進や誤嚥性肺炎の減少につながる。歯科衛生士から指導を受け、各居室にチェックリストを設置し、スタッフが同じ意識で対応できるようにした。口腔ケア勉強会を開催し、知識の共有・統一を図った。その結果、スタッフの口腔ケアへの意識が高まり、1日1回は全利用者に対して口腔内の観察をする習慣になった。口腔ケア用品が清潔に保持されるようになった。歯科衛生士や歯科医への照会が増えた。問題として、自宅に帰ると口腔ケアができなくなる利用者がいる。

F「園芸を通じて期待できる効果」
植物を育てることは、五感を刺激し、記憶を呼び起こしたり、感受性を豊かにしたりするといわれている。また日光を浴びることにより体内時計を調整できるといわれる。季節の野菜や花をプランターに植え、水やりや手入れ、収穫、調理までを利用者に自由参加で実施した。写真を残し、後から回想を促した。植物の栽培は、手続き記憶が保持されていれば手際よくできた。水やりなど役割意識を持つことができた。日光を浴び、メリハリのある生活になった。会話や笑顔などを引き出すことができた。調理作業は農業作業よりもさらに手際よくできた。認知症があっても、できることを活かす働きかけを援助者は行っていく必要性を感じた。