大阪お疲れてんまつ記

 普段、田舎者が都会に行ったら、そんなにええことありまへんわ。いつもなら車で行くので、子どもが暴れても予定が狂ってもそうかまいまへんけど、こと電車を使うとなると、やっぱり大変ですわ。第一、じっとしていることができまへん。第二に、人ごみの中歩くことに慣れてないので、えらい消耗します。第三に、大阪の人は早う歩かはるんで、私ら遅いんですわ。第四に、駅での電車の乗り換え、これには疲れますわ。第五に、子ども4人いると誰か1人が機嫌悪いんですわ。

 なんとか大阪駅を降りたのはいいんですけど、新梅田ビル、見えるんやけど行けへん。地下道を通らんと行けんのですな。これでだいぶん時間をとりました。「人体の不思議展」が、もう今月で終わりやっちゅうさかい、子ども連れて見に行こか、と思たのが間違いやったのかもしれまへん。疲れていたのもあるし、人間の死体の展示ですやん。子どもらもう黙ってしもて拒絶反応でしたわ。「お父さんは医学部で解剖半年もやったんやで」っちゅうたら、「私は絶対医者にはならん」ちゅうよおる。別に医者になれとは言わへんけんど、せっかく連れてきたんやで、もうちょっと興味持ってえな。

 アイスクリームで気をそらして、ビルの最上階の空中展望台、これは子どもらにはヒットでしたんや。さすがに地上140mですわ。景色がよう見えました。
 近くを流れる淀川、「姉川から琵琶湖を通って淀川にくるんやで」っちゅうと、「ふうん」と言うとりました。

 39階に、あなたの生れた日の新聞記事をコピーしますっちゅう、機械がありましてな、300円で読売新聞の表紙か、テレビ欄を印刷することができるんですわ。子どもらの生れた日の新聞記事の表紙(一面)をコピーしたんですけどな、平成4年とか7年とかですやろ、バブル崩壊したあとで、景気の悪い話ばっかりですわ。嫁はんのときは、高度成長期、やっぱり希望のある記事でしたな。

 ちなみに3階には朝日新聞の記事をコピーする機械が置いてありました。

 それから行きましたのが、キッズプラザ大阪。さすがにもう電車に乗り換える気力はうせて、タクシー使いましたんや。子ども4人おると、タクシーのほうが便利でんな。ちゃんと希望する場所まで乗せていってくれやはる。え、当たり前ですって。ほうなんやけど、電車代も馬鹿にならんようになってきたし、大都会では重宝しまんな。

 ここは、名古屋の市立科学館とよう似たところでしたわ。

 まあ、当分都会には飽きて、近づかんと思いますけど、ええ勉強になりましたわ。わてらは田舎者やてゆうことがよう分かりました。「田舎のねずみが都会へ行く」っちゅう童話と同じですな。

 帰りの新幹線で、「今日は面白かったか?」って聞いたけど、「ぜんぜんおもしろなかった」やて。 サービスでもええで、「ちょっとは面白かった」て言うて欲しかったわ。


しょうもない話

 ちなみにまじめな話になりますんやけど、「人体の不思議展」。その魅力とは別に、何がしかの物足りなさを感じましたわ。ただの肉体の展示なんですわ。時間が止まってましたんや。ダイナミズムがない、活き活きとした人間の営みがない。わてらは「腹が減った」というのを「脳」が感じ、「何を食べようか、大阪に来たさかいお好み焼きがええな」っちゅう想像が働き、そして店に入るという筋肉の行動がある。神経と筋肉と感覚器と消化器を使って食べて、血糖値が上がって満腹する・・・・っちゅうのが人間ですやんか。

 医療っちゅうもんは、科学じゃなくって、臓器も見ますけど心と心の通い合いっちゅうもんが必要で、これがないと「癒し」にならへん。自分の勉強不足を棚に上げてえらそうなこといいますんやけど(筋肉や神経の名前、だいぶん忘れてた)、子どもも敏感に感じていたんかもしれまへんわ。


そういいながらふと目の上を見ると、診療所の診察室の上にたくさんの標本模型がありました。わざわざ行かんでもよかったかも?